税務署に開業届を提出することで、個人事業主としてのスタートが切れます。
今回は、個人事業主になるための手続き方法から、そのメリット・デメリットまで詳しく解説します。
目次
個人事業主とは?
個人事業主とは、法人を設立せず、個人で独立して継続的に事業所得を得ている人を指します。
新たに事業を始めた場合、原則として1ヵ月以内に管轄の税務署に開業届を提出し、手続きを行う必要があります。
また、開業する際に職種や業種に特別な制限はありません。
医師や士業、Webデザイナーなどのクリエイティブ職も含め、税務署に開業届を提出すれば、誰でも個人事業主として事業を行うことができます。
個人事業主とフリーランスの違い
クリエイティブ職などでよく耳にする「フリーランス」と「個人事業主」には、いくつかの違いがあります。「個人事業主」とは、事業を営む個人を指す税務上の所得区分を意味します。
一方で、「フリーランス」は、企業と雇用契約を結ばず、案件単位で業務を請け負う働き方を指す言葉で、税務上の区分には関係ありません。
フリーランスは働き方を示す用語であり、個人事業主だけでなく、法人化した個人も含まれます。しかし、個人事業主は税務署に開業届を提出した個人を指すため、法人化した個人は含まれません。
個人事業主になるのに必要な書類
個人事業主になるためには、所轄の税務署に開業届を提出する必要があります。
また、個人事業主として開業する際には、必要に応じて開業届と一緒に提出すべき書類があります。
ここでは、これらの書類の概要や提出期限について解説します。
開業届
開業届とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」であり、個人事業を開業したことを税務署に届け出るための書類です。
事業開始から1ヶ月以内に提出することが推奨されていますが、提出しなくても罰則はありません。ただし、青色申告を行う場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」と一緒に所轄の税務署に提出する必要があります。
開業届は、国税庁のホームページからダウンロードでき、税務署の窓口でも受け取ることができます。
青色申告承認申請書
青色申告で確定申告を行う場合、その年の3月15日までに開業届と一緒に所轄の税務署に提出する必要があります。
確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
青色申告を選ぶと、最大65万円の所得控除を受けられたり、家族や従業員に支払った給与を必要経費として計上できたり、税制上の優遇措置を受けることができます。
ただし、青色申告は白色申告に比べて、日々の帳簿付けや作成しなければならない会計書類が多く、複雑です。
青色申告と白色申告のそれぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、どちらにするかを決めましょう。
また、青色申告承認申請書を提出していない場合は、自動的に白色申告となります。
従業員雇用時に提出する書類
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」は、従業員を雇用する事務所を開設した場合や、開業後に従業員を雇用する場合に提出が必要です。
開業時にすでに従業員を雇用している場合、開業届の「給与等の支払の状況」欄に必要事項を記入すればよいため、この届出書は提出する必要はありません。
また、従業員を雇用する事務所の移転や廃止があった場合にも、この届出書を提出しなければなりません。提出期限は以下の通りです。
・事務所を開設したとき:事実があった日から1ヶ月以内
・開業後に従業員を雇用したとき:雇用した日から1ヶ月以内
・事務所の移転や廃止があったとき:その事実があった日から1ヶ月以内
これら3つの書類の提出方法は、税務署の窓口、オンライン、郵送など、複数の方法があります。税務署は営業時間内のみの対応となるため、時間がない場合はオンラインや郵送を利用するのも便利です。
個人事業主になるのに必要な手続き
個人事業主として開業する場合、会社員とは異なり、いくつかの手続きが必要です。
主な手続きとしては、「国民健康保険の加入」「国民年金への加入」「小規模企業共済への加入」「事業用銀行口座の開設」「確定申告の準備」などの5つがあります。
これらの手続きは、個人事業主として順調に事業を運営するために重要です。以下では、それぞれの手続きについて詳しく解説していきます。
国民健康保険への加入
個人事業主は通常、国民健康保険に加入します。
会社員のときは、健康保険料の半分を会社が負担してくれていましたが、国民健康保険では保険料全額を自己負担することになります。
国民健康保険への加入手続きは、勤めていた会社を退職した翌日から14日以内に行う必要があります。
また、以前勤めていた会社の健康保険を任意で継続する方法もあります。この場合、退職日の翌日から20日以内に申請が必要です。
ただし、任意継続も会社負担はなく、保険料全額を自己負担となります。納付期限までに支払わないと脱退となるため、支払いには十分注意しましょう。
国民年金への加入
個人事業主は、国民年金に加入します。
会社員の場合、給与から天引きされる厚生年金保険料には国民年金も含まれていますが、個人事業主は自分で国民年金に加入し、国民年金保険料を納める必要があります。
国民年金への加入手続きは、退職から14日以内に行う必要があります。
また、国民年金だけでは、会社員が加入する厚生年金よりも将来受け取れる年金額が少なくなります。
そのため、国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などを活用し、自身で将来の備えを考えることも重要です。
小規模企業共済への加入
小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積立型退職金制度で、廃業時には共済金として受け取ることができます。
月々の掛金は1,000円から7万円の範囲で、500円単位で自由に設定可能で、加入後も増額や減額ができます。
また、確定申告の際には掛金全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果が得られます。
事業用銀行口座の開設
個人事業主は、屋号付きの事業用口座を開設することができます。
確かに、個人名義の口座をもう1つ作る方法でも問題はありませんが、個人事業主用の口座を使うと、事業の収支が明確になり、会計ソフトとの連携がスムーズになる口座も多いため、確定申告が楽になります。
また、帳簿付けや資料作成、日々の経理業務の負担が軽減されるのも大きなメリットです。
ただし、屋号付きの口座を開設できる銀行は限られており、口座開設に時間がかかる場合もあるため、事前に計画的に準備することが大切です。
確定申告の準備
確定申告とは、1年間の所得に対する納税額を計算し、申告・納税する一連の手続きを指します。
給与所得者(会社員など)は、会社で年末調整を受けるため、確定申告は不要です。しかし、個人事業主は自分で確定申告を行わなければなりません。
申告しない、または期限を過ぎると、本来納めるべき税金以上の金額が課せられるなど、ペナルティが発生する可能性もあるため、必ず期限内に対応が必要です。
確定申告には青色申告と白色申告があり、節税効果の高い青色申告を選ぶ場合は、青色申告承認申請書を提出することを忘れないようにしましょう。
個人事業主になるメリット
個人事業主として開業することには、多くのメリットがあります。
例えば、「開業手続きが簡単」「税務申告が簡単」「節税効果が大きい」「青色申告特別控除が受けられる」などが挙げられます。今回は、これらの5つのメリットについて詳しく解説します。
開業の手続きが簡単
個人事業主としての開業は非常に簡単で、これが大きなメリットの1つです。
例えば、法人設立の場合、登記申請が必要で、定款認証費用や登録免許税の合計が約20万円かかります。また、税理士などの専門家に依頼する場合は、別途費用も発生します。
一方、個人事業主として開業する場合、開業届を提出するだけで開業でき、申請にかかる費用は一切必要ありません。
税務申告が簡単
個人事業主の税務申告は、会計ソフトを使えば比較的簡単に行うことができます。そのため、税理士を雇わずに自分で確定申告をする人も多いです。
一方で、法人の税務申告は個人事業主と比べて正確性が非常に重要です。税金の計算、経費の計上、帳簿の管理など、すべてが正確である必要があります。そのため、法人経営者は税理士に依頼することが一般的です。
節税効果が大きい
個人事業主の課税期間における基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務は免除されます。
ただし、適格請求書発行事業者として登録している場合は、基準期間の売上高に関係なく、消費税の納税義務は免除されませんので注意が必要です。
また、事業所得が1,000万円を超える場合、個人事業主よりも法人を設立した方が節税効果を期待できる場合があります。
青色申告特別控除が受けられる
開業届と青色申告承認申請書を提出し、青色申告者になると、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使って申告を行うことで、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。
また、青色申告は、個人事業主向けの会計ソフトを活用することで、複式簿記による帳簿付けが比較的簡単に行えます。
口座のお金を自由に使える
個人事業主の場合、事業で得た利益は事業主の所得となり、自由に使うことができます。
一方、法人化の場合、事業で得た利益は自由に使うことができません。これは、法人と個人の資産が全く別物として扱われるためです。利益は会社のお金となり、経営に必要な固定費や人件費、銀行への返済などに使われます。
そのため、もし好きなときに口座から気軽にお金を引き出したいのであれば、個人事業主の方が適しているかもしれません。
個人事業主になるデメリット
個人事業主のデメリットは、社会的信用が低く見られがちな点です。信用が低いと、大手法人との契約を避けられたり、融資を受ける際に不利になったりすることがあります。また、人材採用が難しいという点も挙げられます。
ここでは、個人事業主における主な3つのデメリットについて、詳しく解説します。
社会的信用が低い
個人事業主は、事業を始めるのが簡単である反面、信用面では法人に比べて低く見られがちです。
大企業の中には、信用面を理由に個人事業主との契約を避けることがあります。そのため、取引先や業種によっては、個人事業主として開業するよりも法人を設立した方が信用面で有利になる場合があります。
融資を受けづらい
個人事業主への融資は、用途が明確でないことが理由で、法人よりも審査が厳しくなる傾向があります。
しかし、確定申告後に受け取る帳票(書類一式)で利益が出ており、一定の自己資金が確認できれば、個人事業主でも融資が下りる可能性は高くなります。
また、融資金額は収入に応じて異なりますが、個人事業主が融資を受ける際には、確定申告の帳票が必要となることがありますので、大切に保管しておきましょう。
人材採用が難しい
人材を募集する場合、個人事業主だと苦戦することがあるかもしれません。
法人は社会保険への加入が義務付けられているため、求職者にとって安心感があります。一方、個人事業主の場合、社会保険が義務となるのは一定の条件を満たした職場だけです。
また、個人事業主という立場や、事業規模が小さいことから、アルバイト求人であっても法人に比べて人気が出にくい傾向があります。
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まとめ
個人事業主として開業するメリットは、手続きが簡単で費用も少なくて済む点です。特に、会計ソフトを活用することで、申請作業をスムーズに進めることができます。
また、個人事業主は柔軟性が高いため、事業が成長してから法人化を検討することも可能です。
しかし、信用面やビジネスモデルによっては法人の方が有利になることもあります。そのため、事業の成長段階やニーズに応じて法人化を検討するのも良いでしょう。