会社を退職し、起業の準備をしている間だけでも「失業保険を受け取れないだろうか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、状況によっては受給が可能なケースもあります。
ただし、申請方法を誤ると最悪の場合「不正受給」とみなされる可能性もあります。そのため、制度を正しく理解し、適切な手続きを行うことが非常に重要です。
この記事では、失業保険を受け取るための条件や支給額の目安、さらに再就職手当の概要についても詳しく解説します。
目次
そもそも失業保険とは?
失業保険は、離職後に再就職するまでの期間において、安定した求職活動を支援するために提供される雇用保険制度の1つです。
この制度では、失業手当の支給や職業紹介を通じて、求職者の生活と活動をサポートします。
自己都合で退職した場合でも、基本手当として知られる失業手当を受け取ることができます。
ただし、失業保険を受け取るには一定の受給要件を満たす必要があり、退職したすべての人が必ずしも受け取れるわけではありません。
雇用保険制度の概要(ハローワークインターネットサービス)を参考に執筆(2025年4月16日)
起業準備段階でも失業保険を受給できる?
起業の準備段階であっても、並行して求職活動を行っていれば、失業保険を受給できる可能性があります。
ただし、退職後すぐに起業することが確定している場合は、「就職する意思がない」とみなされ、失業保険の受給対象とはなりません。
また、失業保険を受給するには、法律で定められた細かな要件を満たす必要があります。そのため、起業準備中であっても、これらの条件をしっかりと満たしていることが前提となります。
起業を視野に入れながらも失業保険の受給対象となり得るケース
次のような状況であれば、起業を視野に入れている場合でも、失業保険の給付対象となる場合があります。
・起業資金を準備するために、一時的に再就職を検討している
・起業に必要な知識やスキルを身につけるため、再就職を予定している
・友人と共同で起業をする予定で、その友人のもとで従業員として働く意向がある
これらのケースに共通して重要なのは、「再就職の意思がある」と認められることです。
また、受給資格や具体的な要件については細かい規定がありますので、あらかじめハローワークで確認しておくことをおすすめします。
起業時に注意したい失業保険の不正受給について
失業保険を受給しながら開業届を提出することは、不正受給と判断される可能性があるため注意が必要です。
失業保険は、あくまで再就職を支援するための制度であり、起業して事業を開始した場合、それは「就業した」とみなされ、受給資格を失うことになります。
そのため、失業保険を受け取りながら起業を考えている場合は、あくまで就職活動と並行して行う「準備段階」にとどめておくことが大切です。
なお、開業届の提出がハローワークに知られるかどうかについては、厚生労働省のウェブサイトに参考情報が掲載されていますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
厚生労働省 大阪労働局 不正受給について(事例等)を参考に執筆(2025年4月16日)
失業保険の受給要件と受給対象外となるケース
失業保険を受給するには、まず一定の条件を満たしている必要があります。
しかし、条件を満たしていても状況によっては受給の対象外となるケースも存在します。ここでは、失業保険を受け取るための主な条件と、受給対象外となる具体的なケースについて詳しく解説します。
失業保険の受給要件
失業保険の受給には、「一般保険者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」の3つのカテゴリーがあり、それぞれに定められた条件を満たす必要があります。
■ 一般受給資格者(一般的な離職者)
・離職前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あること
・働く意思と能力があるにもかかわらず、就職できない状態にあること
■ 特定受給資格者(会社都合による離職者)
・倒産※1や解雇などのやむを得ない理由で離職した場合
・離職前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が6か月以上あること
■ 特定理由離職者(正当な理由による自己都合退職)
・契約更新を希望していたにもかかわらず、契約が更新されなかった場合
・正当な理由※3により自己都合で離職した場合
・離職前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が6か月以上あること
※1 倒産に該当するケース
・会社が破産手続きを行った場合
・1か月以内に30人以上の人員整理(大量リストラ)があった場合
・事業所の廃止により雇用継続が困難になった場合
・事業所が遠方へ移転し、通勤が困難となった場合
※2 解雇等の条件に該当するケース
・契約内容と実際の業務内容が著しく異なるため離職した場合
・賃金の1/3以上が給料日までに支払われなかったため離職した場合
・離職前6か月間に、以下のような過度な残業があった場合
・連続3か月で毎月45時間以上の残業
・いずれか1か月で100時間以上の残業
・いずれか連続2か月で毎月80時間以上の残業
※3 正当な理由による自己都合退職のケース
・心身の病気や障害、体力の限界により離職した場合
・妊娠・出産・育児などを理由に離職し、受給期間の延長措置を受けた場合
・親族の病気・ケガ・死亡など、やむを得ない家庭事情で離職した場合
・配偶者や扶養親族との別居が困難となり、離職を選択せざるを得なかった場合
Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~(厚生労働省)を参考に執筆(2025年4月16日)
特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワークインターネットサービス)を参考に執筆(2025年4月16日)
受給対象外になるケース
たとえ被保険者期間の条件を満たしていても、次のような場合には失業保険(基本手当)の受給対象外となることがあります。
失業保険の受給対象外となる主な例
・求職活動をしておらず、家事に専念している人
・勉強に集中していて、求職活動を行っていない学生
・すでに再就職先が決まっている人
・自営業を開始した人
・自営業の準備に専念していて、就職活動をしていない人 など
失業保険を受け取るには、「就職の意思と能力があり、実際に求職活動を行っていること」が前提条件です。そのため、上記のように求職活動を行っていない場合は、原則として受給できません。
ただし、最終的に受給資格があるかどうかを判断するのはハローワークです。少しでも受給の可能性があると感じた場合は、迷わずハローワークの窓口で相談してみることをおすすめします。
失業保険を受給できる期間はいつまで?
雇用保険の受給期間は、離職日の翌日から起算して原則1年間と定められています。
この期間内で、失業状態にある日について、所定の給付日数の範囲内で失業保険(基本手当)を受け取ることができます。
たとえば、勤続年数が15年の自己都合退職者の場合、所定給付日数は120日となり、受給期間内の120日分まで支給される仕組みです。
また、失業保険には「待期期間」があり、離職票の提出と求職の申し込みを行った日から7日間は手当が支給されません。
会社都合退職であれば7日後から、自己都合退職の場合は7日+約1か月後から受給が始まります。つまり、待期期間を終え、ハローワークで失業状態と認定されて初めて給付が開始されます。
なお、給付日数は年齢や退職理由、勤続年数などによって異なります。
よくあるご質問雇用 保険について(ハローワークインターネットサービス)を参考に執筆(2025年4月16日)
よくあるご質問雇用 保険について(ハローワークインターネットサービス)をもとに作成(2025年4月16日)
失業保険の受給金額はいくら?
失業保険において、1日あたりに受け取ることができる手当は「基本手当日額」と呼ばれます。
この金額は、退職前6か月間に支払われた賃金をもとに算出され、さらに年齢区分によって上限額が異なる仕組みとなっています。
雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和6 年8 月 1 日から~(厚生労働省 都道府県労働局・ハローワーク)をもとに作成(2025年4月16日)
失業保険に関連する再就職手当とは?
再就職手当とは、失業保険の基本手当の受給中に、所定の受給期間が3分の1以上残っている状態で再就職や起業をした場合に支給される手当です。
失業保険の給付額は、離職時の年齢や勤続年数によって決まります。そのため、早めに再就職すると、受け取れる基本手当の総額が少なくなることがあります。
こうした状況を受けて、できるだけ早期に再就職を決めた人を支援し、基本手当をすべて受け取るまで就職を控える人を減らす目的で設けられたのが「再就職手当制度」です。
「再就職手当について」(厚生労働省)を参考に執筆(2025年4月16日)
再就職手当の受給要件
再就職手当を受け取るには、以下すべての要件を満たす必要があります。
1.就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数
の 3分の1以上あること
2.1年を超えて勤務することが確実であると認められること
3.待期満了日以降の就職であること
4.離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後の1か月間については、ハロー
ワーク等または許可・届出のある職業紹介事業者等の紹介により就職したものである
こと
5.離職前の事業主や、その関連事業主への再就職ではないこと
6.就職日前 3 年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受け
ていないこと
7.受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでは
ないこと
8.原則として、雇用保険の被保険者資格要件を満たす条件での雇用であること
また、上記の3つ目の要件にあるとおり、起業であっても満了日以降であれば、再就職手当の対象となります。つまり、会社都合退職であれば7日後以降、自己都合退職であれば1か月と7日後以降に起業した場合、失業認定が可能となり、再就職手当の受給資格を得ることができます。
受給対象外になるケース
失業保険の認定を受ける前に起業すると、「再就職手当」の対象外となってしまいますので注意が必要です。
たとえば、会社都合で退職した場合は、待期期間が終了した7日目以降に開業届を提出する必要があります。自己都合退職の場合は、7日間の待期期間に加えて1か月の給付制限期間が終了した後でなければ、開業しても再就職手当を受け取ることができません。
再就職手当を受けながら開業したい場合は、「失業の認定を受けるタイミング」をしっかり確認してから行動することが重要です。
再就職手当の受給期間はいつまで?
再就職手当には「受給期間」は設けられておらず、申請が受理され審査にとおると、一括でまとめて支給されます。
この手当を受け取るには、まず「再就職手当受給申請書」をハローワークに提出し、審査を受ける必要があります。ただし、審査には一定の時間がかかるため、申請後すぐに支給されるわけではありません。事前にスケジュールに余裕をもって準備しておきましょう。
また、審査の進捗が気になる場合は、申請を行ったハローワークに直接来所すれば確認できます。その際、本人確認書類の提示を求められる場合がありますので、忘れずに持参してください。
Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~(厚生労働省)を参考に執筆(2025年4月16日)
再就職手当の受給金額はいくら?
再就職手当の支給額は、以下の計算式で算出されます。
基本手当日額 × 残日数 × 支給率(60%または70%)
支給率は、失業保険の「所定給付日数」に対する「残日数」の割合によって異なります。
残日数が所定給付日数の1/3以上:60%
残日数が所定給付日数の2/3以上:70%
所定給付日数と残日数に応じた支給率の目安は、以下のとおりです。
就職促進給付 再就職手当のご案内(ハローワークインターネットサービス)をもとに作成(2025年4月16日)
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※2023年10月~2024年9月のデータです。
まとめ
今回は、起業準備を進めながら失業保険を受け取るための方法について解説しました。
前提として、失業保険は「再就職を目指す求職者」を支援する制度であるため、原則として求職活動を行う必要があります。一方、本記事でご紹介したとおり、一定の条件を満たしていれば、起業準備中でも受給できる場合があります。
ただし、ルールに反した受給は不正受給とみなされる可能性があるため、十分に注意し、正しい手続きのもとで活用するようにしましょう。