未経験でも喫茶店(カフェ)を開業したいと考える方も多いのではないでしょうか。
本格的な飲食店と比べて敷居が低く、趣味を仕事にしたり、自分の理想のお店を実現できたりするため、喫茶店の開業は非常に人気があります。しかし、開業の敷居が低いからといって、簡単に成功するわけではありません。
そこで、今回の記事では、未経験者が喫茶店を開業する際の難易度や必要な資金、資格、さらには成功するためのポイントについて詳しく解説します。
喫茶店開業は未経験でもできる?
喫茶店の開業は未経験者でも可能です。
しかし、飲食店を運営するためには資格の取得や許可申請を行う必要があります。とはいえ、調理師免許のように学校に通わなければならないような難しい資格ではありませんので、ご安心ください。
ここでは、喫茶店開業に必要な資格の取得方法や関連する免許についてご紹介します。
喫茶店開業には資格や免許が必要?
喫茶店を開業するには、最低限以下の資格や許可が必要です。
・食品衛生責任者
・飲食店営業許可申請
また、店舗の規模によっては、防災関連の手続きや講習を受ける必要がある場合もありますので、注意が必要です。ここでは、これらの資格や申請手続きについて詳しく解説します。
食品衛生責任者
食品衛生責任者の資格を持つスタッフは、各店舗に最低1人必要です。ただし、そのスタッフが必ずしも店長である必要はありません。
食品衛生責任者の資格を取得するには、「食品衛生協会」が開催する講習を受ける必要があります。具体的な内容は以下のとおりです。
“
講習内容及び講習時間
・ 食品衛生学 2時間30分
・ 公衆衛生学 30分
・ 食品衛生法 3時間
・ 講習時間は、午前9:45~午後4:30までの6時間(テスト含む)
※お昼休み 午後0:45~1:30(45分間)
受講資格
・ 経験・学歴は問いません。
・ 17歳以上の方に限ります(高校生は受講できません)。
・ 受講者本人を確認できる公的書類(運転免許証、マイナンバーカード、健康保
険証)をご持参ください。(社員証や学生証は不可。)
・ 外国人の方は、在留カードまたは特別永住者証明書を持参ください。なお、日
本語が理解(読み・書き・会話が)できる方に限ります。
…中略…
受講料
・ 12,000円
[内訳:受講料10,000円(非課税)、教材費等2,000円(消費税10%:182円含む)]
・ 受講日当日の支払い(現金のみ) ※支払い時に領収書をお渡しします。
”
計6時間の講習とペーパーテストを受けることで、1日で資格を取得できます。
難易度は高くないため、比較的簡単に取得可能です。また、調理師免許についてですが、喫茶店の開業には必須ではありません。なお、調理師や栄養士、製菓衛生師などの資格を持っている場合、食品衛生責任者の講習が免除されます。
飲食店営業許可申請
喫茶店を開業するには、保健所へ食品衛生関係の許可を申請する必要があります。
喫茶店でも、飲食店の営業や食品の製造・販売を行う場合、食品衛生法に基づく営業許可を取得しなければなりません。営業許可を取得するためには、施設が定められた基準を満たすことが求められます。
まずは保健所に事前相談を行い、必要な申請書類を準備します。その後、衛生面や設備に関する検査を受けることになります。
防災関連の申請・資格
法律や条例に基づき、建物の条件に応じて防火管理者や防災管理者などの資格を取得する必要があります。条件は用途や規模、収容人員の人数などによってさまざまですが、該当するかどうかはテナントではなく建物全体で判断されます。
ほかにも、「防火対象物使用開始届出書」など喫茶店用のテナントによって必要となる申請や資格は異なります。そのため、購入・借用するテナントが該当するかどうかを確認してから、管轄の消防署で必要な手続きをしましょう。
未経験の喫茶店開業におすすめの業態
未経験者が喫茶店を開業する際におすすめの業態として、以下の4つをご紹介します。
・5坪以内の小さなカフェ
・移動式カフェ
・専門店型カフェ
・週末・不定期営業のカフェ
これらの運営スタイルについて、詳しく解説していきます。
5坪以内に収まる小さなカフェ
5坪以内の小さなカフェは、初期費用を抑えやすいため、おすすめです。
物件の築年数や立地にもよりますが、小規模な物件は大規模な物件と比べて賃料が安く、さらに、店舗の内装や備品が残っている居抜き物件を選べば、内装にかかる費用もほとんど抑えられることがあります。コーヒースタンドやテイクアウト専門のコーヒーショップであれば、5坪以下のスペースでも開業することができます。
また、DIYを活用することで初期費用をさらに抑えられるため、自己資金に余裕を持ちながら開業することができるでしょう。
移動式のカフェ
移動式のカフェは、調理器具を備えたキッチンカーを購入し、イベント会場やオフィス街、駅前など人が多く集まる場所へ移動して出店するスタイルです。
キッチンカーの購入費用は必要ですが、店舗を構える場合と比較すると初期費用は少なくて済みます。例えば、店舗の場合は物件取得費用や家賃がかかりますが、移動式カフェではこれらの費用を削減できるため、非常に大きなコストカットが可能です。
ただし、移動式カフェにはいくつかのデメリットもあります。
・提供できるメニューに限界がある
・屋外のイベントでは天候に左右される
・移動式であるため、リピーターを獲得しにくい
そのため、SNSを活用して認知度を高め、出店前に事前告知を行うことや、オンライン予約に対応するなどの工夫が必要となります。
専門店業のカフェ
喫茶店と相性の良いメニューを専門的に扱うスタイルもおすすめです。
例えば、健康志向をターゲットにしたサラダカフェや、ハンバーガーのテイクアウトができるバーガー喫茶などがあります。もし方針に迷った場合は、「○○専門店」として特定のメニューに絞る方法もあります。
このスタイルでは、メニューが限られているため、未経験者でもスムーズに運営できるでしょう。さらに、単価が高めの商品を提供できれば、喫茶店のデメリットである低単価の問題を解決することも可能です。
ただし、専門店として運営する場合、メニューの味やクオリティには高い水準が求められます。主力商品に悪い口コミが書かれないよう、開業前からメニュー開発に力を入れることが非常に重要です。
週末・不定期営業のカフェ
「週末のみ」や「平日3日のみ」など、不定期に営業するスタイルでカフェを開業する方法もあります。
この方法は、自宅でカフェを開く場合や、夜にバー営業をしているお店を日中に間借りする場合などに適しています。不定期営業を試してみることで、カフェ経営に向いているか、1人で運営できるかを実際に見極めるために始めてみるのもよいでしょう。
また、週末カフェや不定期カフェは、コストを低く抑えたい場合におすすめの方法です。物件を通常どおり契約するよりも経費を抑えた営業が可能です。
未経験の喫茶店開業にかかる初期費用は?
未経験者が喫茶店を開業する際にかかる初期費用は、一般的に600万~900万円といわれています。その内訳として以下のものが挙げられます。
・物件取得費
・内装・設備費
・初期在庫費
・人件費
・広告宣伝費
ここでは、これらの初期費用の内訳と、実際の費用例についてご紹介します。
物件取得費
物件取得費とは、前家賃、敷金、礼金、仲介手数料など、物件契約時に必要な費用のことです。この費用は立地や物件の条件によって大きく異なりますが、一般的には賃貸料の10倍程度かかるとされています。
例えば、月額20万円の賃貸店舗の場合、物件取得費はおおよそ200万円と見込んでおきましょう。
都心部や人通りの多い場所では賃貸料が数百万円に達することもあります。一方、郊外や地方の物件は比較的安価ですが、理想の立地や資金計画を考慮し、慎重に選ぶことが重要です。
内装・設備費
カフェの内装や設備費用は、物件の種類によって大きく異なります。特に、スケルトン物件(内装が施されていない物件)と居ぬき物件では費用に差があります。
スケルトン物件の場合、内装費用は坪単価で30万~60万円程度となり、5坪のカフェを立ち上げるにはおおよそ200万円の費用がかかると考えられます。一方、居ぬき物件の場合は、坪単価が10万~30万円程度であるため、内装費用は100万円程度と見込んでおくとよいでしょう。
また、内装にこだわり、高級な素材やデザインを選ぶと、費用はさらに増加します。
設備についても、最新の機材を導入すればその分費用がかさみます。初期費用をできるだけ抑えたい場合は、中古品を検討するのも1つの方法です。
初期在庫費
喫茶店の初期在庫費用は、一般的に20万~50万円程度とされています。
この費用には、コーヒー豆や紅茶の茶葉などの原材料、飲料や食材、トイレットペーパー、紙ナプキンなどの消耗品が含まれます。特に、食材にこだわったカフェを開業する場合は、初期在庫費用が高くなることがあり、50万円程度になることもあります。
カフェの1か月あたりの食材費は平均で約20万~30万円とされています。新鮮な食材を使用するため、食材の回転率を考慮し、在庫管理をしっかりと行うことが求められます。
また、季節やイベントに合わせたメニュー展開を行う場合、それに応じた追加の在庫が必要になることもあります。これらの要素を踏まえて、初期在庫費用を適切に確保しておくことが、スムーズなカフェ運営のために重要なポイントとなります。
人件費
喫茶店の初期費用に含まれる人件費は、店舗の規模によって異なります。小規模店舗の場合、月額で約20万円、大規模店舗では月額50万円程度が目安とされています。
例えば、6か月間の人件費を見積もると、小規模店舗では約120万円、大規模店舗では約300万円になります。
もし小規模でスタートし、スタッフを雇わずに自分1人で運営する場合は、人件費を抑えることができますが、スタッフを雇う場合でも、パートタイムスタッフを活用したり、家族や友人に手伝ってもらったりすることでコストを抑えることが可能です。
とはいえ、スタッフへの対価はしっかりと確保し、適切な労働環境を整えることが大切です。
広告宣伝費
喫茶店の開業時にかかる広告宣伝費は、一般的に10万~100万円程度とされています。
特に開店初期には、多くの人に店舗を知ってもらうことが重要です。賃料や内装にこだわるあまり広告費を削ってしまう方もいますが、広告宣伝費は費用に対して得られる効果が高いため、投資する価値が大いにあります。
とはいえ、近年はインターネットの普及により、SNS、動画サイト、ホームページなどを活用した無料の集客も可能です。これにより、コストを抑えつつ、効率的に多くの人にお店の存在を認知させることができます。
上手に広告宣伝を行うことが、スタートダッシュを成功させるポイントになります。
未経験の喫茶店開業は難しい?
未経験者、経験者問わず、喫茶店の開業は簡単なものではありません。
その理由として、カフェのオープンまでにかかる時間や廃業率の高さが挙げられます。
ここでは、喫茶店開業が難しいとされる2つの理由について詳しく解説します。
カフェ開業にかかる期間
カフェなどの飲食店の「準備から開業までの期間」は、6か月~1年程度が目安です。特に開業が未経験の方の場合は、1年前から準備を始めることをおすすめします。
具体的なスケジュールは以下のとおりです。
このように、計画的に進めなければ、開業日がどんどん後ろ倒しになってしまうことがあります。そのため、「なんとなく」で進めるのではなく、「この時期までにはここまで進めておく」といった明確な計画を立てておくことが重要です。
カフェ開業は甘くない?カフェの廃業率
喫茶店の廃業率は、1年以内に3割、5年以内には6割に達するといわれています。
株式会社シンクロ・フードが公開したプレスリリースによると、以下のような結果が示されています。
“
調査概要
調査対象:「飲食店ドットコム」に登録された造作譲渡情報のうち営業年数および業態を保有するデータ
調査対象数:3,692件
調査期間:2016年1月1日~2023年12月31日
閉店しやすい業態は、「お弁当・惣菜・デリ」、「そば・うどん」、「ラーメン」、「カフェ」
閉店した飲食店の件数を業態と営業年数ごとに集計したところ、「お弁当・惣菜・デリ」、「そば・うどん」、「ラーメン」、「カフェ」は、6割以上の店舗が営業3年以内で閉店しており、かつ3割以上の店舗については営業1年以内に閉店していることがわかりました。これは昨年の調査(https://www.synchro-food.co.jp/news/press/4590)と同じ結果となります。
”
このデータからも、喫茶店の経営が非常に厳しい状況であることが伺えます。主な要因として、以下の点が挙げられます。
・客単価の低さ
・回転率の低さ
・競合の多さ
例えば、コーヒー1杯の価格は数百円と低く、喫茶店は本を読んだり、PCで作業をしたりと、長時間滞在する場所として利用されることが一般的です。
これにより、客単価と回転率が上がりにくい状況が続きます。
また、近年では大手チェーン店の進出が相次ぎ、競争が激化しています。このような環境下では、低単価や低回転率、さらに激化する競争が影響し、売上が思うように伸びず、結果として短期間で廃業に追い込まれる喫茶店が増えています。
喫茶店で成功を収めるためには、これらの課題を乗り越えるための戦略を立てることが重要です。
未経験からの喫茶店開業のポイント
未経験から喫茶店を開業する際に特に重要なポイントとして、以下の5つが挙げられます。
・開業前に入念な計画を立てる
・資金に余裕を持つ
・物件の条件にこだわる
・実際にカフェで働いてみる
・経営に関する講座を受ける
ここでは、これらの5つのポイントについて詳しく解説します。
計画は入念に立てる
カフェを開業する際は、行き当たりばったりではなく、しっかりとした事業計画を立てることが重要です。
まず、どの程度の規模で開業するか、どの世代をターゲットにするかなど、カフェのコンセプトを明確に決めましょう。
その上で、開業までに準備すべき事項や物件選定、営業許可の申請などをスケジュールに沿って進めることが大切です。また、開業後に経営を軌道に乗せるための期間や、目標となる1日あたりの売上額なども予測し、計画に反映させましょう。
計画をしっかりと書類にまとめることで、売上や利益の見通しが立てやすくなり、メニュー価格設定や運営の方向性も適切に決められるようになります。
資金に余裕を持つ
カフェ開業において資金に余裕を持つことは非常に重要です。
そのため、未経験で大規模なカフェを開業するのではなく、まずは小規模なカフェや移動式カフェから始めることをおすすめします。
これらの規模の小さいカフェから開業すれば、開業後に必要となる経営資金にも余裕が生まれるため、仮にカフェ経営で赤字が出ても、すぐに閉業することなく、事業を続けることが可能になります。
一方、未経験で大規模なカフェを開業すると、内装工事やテナント費用、スタッフの雇用など、必要な費用が膨らみます。そのため、経営資金が圧迫され、廃業するリスクが高まります。
最初は費用を抑えた小規模なカフェからスタートし、経営が安定してきたら大きな店舗への移転や、2店舗目の開業を検討するなどの段階的な成長を目指すのが賢明です。
物件の条件にこだわる
カフェ開業において、物件選びは非常に重要です。
設備工事の費用を抑えたい場合は、最初から設備が整っている物件を選ぶか、過去に飲食店が営業していた「居抜き物件」を探すのがおすすめです。ただし、設備が新しく整っている居抜き物件や「駅近」、「路面店」、「都心や繁華街」などの好立地物件は、契約時に高額な費用がかかることがあります。
一方、スケルトン物件は、内装工事や設備導入に高額な費用がかかりますが、デザインを自分好みにカスタマイズできる大きなメリットもあります。
そのため、カフェのコンセプトや自己資金を踏まえて、優先すべき条件を整理し、良い物件が見つかれば迅速に契約し開業に向けて計画を進めることが大切です。
実際にカフェで働いてみる
まったくの未経験からのカフェ開業が不安な場合、一度カフェスタッフとして働いてみることをおすすめします。
カフェでの接客や注文の受け方、レジ打ちや伝票の処理方法など、普段サービスを受けている側ではなかなか気づけない点を学ぶことができます。また、注文を受けてから提供するまでのスピード感や、混雑時の対応、クレーム対応なども実際に経験しておくと、開業後に役立つスキルとなります。
スムーズな接客や自信を持った開業を目指しているなら、カフェの求人をチェックし、実務経験を積んでみるとよいでしょう。
経営が学べる講座などを受ける
カフェ開業・経営のセミナーは、開業の流れやコーヒーに関する知識を効率的に学べるのでおすすめです。
プロから直接指導を受けることで、カフェ開業に重要なポイントを短期間で把握できます。ただし、セミナーの内容や主催者はさまざまであり、自分に合ったセミナーを選ぶことが大切です。
特に、初心者の方がセミナーに参加することに不安を感じる場合は、老舗のコーヒーメーカーや大手企業が主催する1回完結型のコーヒーセミナーから参加してみるとよいでしょう。
まとめ
今回は、未経験者が喫茶店を開業する際に重要なポイントを解説しました。
まず、喫茶店の廃業率は飲食店全体の中でも高く、決して甘いビジネスではありません。また、喫茶店の特徴として、平均単価が低く、顧客の滞在時間が長いため、収益率や回転率が低くなるというデメリットもあります。
これらを踏まえた上で、競合店との差別化を図り、独自の商品を提供してリピーターを増やすことが、成功へのカギとなるでしょう。
もし未経験で喫茶店を開業したいと考えているのであれば、この記事で紹介したポイントを参考にしてみてください。
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